2007年の報告


●2007年12月9日 at 京教大物理実験室
第91回AP研報告
<参加> 栗木,山口,古結,岩間,本間,福嶋,酒谷,倉内,谷口,山崎

1.太陽電池の特性<現代テクノロジー講座の復習>
 1.5V用の太陽電池に電気スタンドのライトを照射する実験

 (1)太陽電池1個で麦球を光らす場合と2個直列で光らす場合の明るさの違い
  距離によって違う 少し離したときは明るさがほとんど変わらず,ライトに近づけたときは直列の方が明るい理由は太陽電池の特性曲線で説明できる

 (2)太陽電池と赤色,青色LEDを接続するとき
  電池1個では赤色しか光らず,ライトにできるだけ近づけないと光らない。電池2個だと少しライトから離しても,赤色,青色とも光る

 (3)太陽電池とソーラーモーター(マブチ)を接続するとき
  今回は電池1個でも2個でも回転した(昨日は2個になると回転しなかったが,電気スタンドの明るさが昨日と違うことが原因)

 (4)太陽電池を部分的に隠して,麦球を光らすとき
  横(極部分)を隠すと光らなくなるが,縦を一部隠しても光る

 いずれも一般の電池とは大きく異なる現象だが,太陽電池の特性を理解すればわかってくる。
 物理Uの電流分野で非線形抵抗を行うのは高校3年の夏前後であろうが,そのあたりを理解した上で発展的な探究学習として行うには面白い題材だと考えられる。

2.REALTAIME物理の検討
 本日は,ダウンロードしたREALTAIME物理のファイルを使用。基本的にはそのまま使える(速度,加速度はスムージングが行っているが,夏に行った本間方式とは少し違う。本間方式の方がよいとの声もある)最後のファイルだけ一部おかしい部分があり,本間さんの方で伝えることに。

・Lab11 仕事とエネルギーの実験
 Activity1−2 斜面上の台車を引っ張る
 ゆっくり台車を引くとき,斜面に平行,斜面と60°の角度をなすときの大きさの違いを力センサーで測定 ここでは力の分力の確認を行っている
 台車の方に力センサーを取り付けて,どの角度で引っ張っても力は同じであることをやっても意味がある。

 Activity2−1 おもりを持ち上げる仕事
 ゆっくり等速で持ち上げるときの力−時間,速度−時間グラフで大きさを確認する。力×距離で求めた仕事の値と,力−距離グラフの面積を統計機能で求めた仕事の値を確認

 発展2−2 一定でないばねの力による仕事
 力がだんだん変化するときの仕事を考えさせることにとどまる課題。実際には,力−距離グラフが三角上になることが見られた


・Lab12 エネルギー保存の法則
 Activity1−1 位置エネルギーを測る
 ボールを落下させて,位置−時間グラフ,位置エネルギー−時間グラフが一致するのを確認

 Activity1−2 力学的エネルギー
 同様にボールを落下させて,力学的エネルギー,位置エネルギー,運動エネルギーの位置による変化をグラフ化。減少分だけ運動エネルギーが増加するきれいなグラフが得られた。

 Activity1−3 斜面上での力学的エネルギー
 同様の実験を斜面で行う。

 発展1−4 摩擦と力学的エネルギー
 斜面上の実験を摩擦がある場合で行う。台車に摩擦パッドを取り付ける。これまで力学的エネルギーが一定だったのに対し,なだらかに放物線を描いて減少していくのが見られた。

 Activity2−1 ばね定数
 力センサーを用いてばね定数を求める。

 Activity 力学的エネルギー
 弾性エネルギーの場合の力学的エネルギーを考える。
 つるしたばねにおもりをつけて振動させる。距離センサーと力センサーでそれぞれのエネルギーを求め,力学的エネルギーが一定であることを確認。
 発展として,厚紙を取り付けて振幅がだんだん小さくなる場合を考えるものもあるが,時間の関係で省略。

・REALTAIME物理をめぐる議論
力学で公開講座に取り組んだ前半と比べて,このLab11,12はほとんど予想する課題がない。摩擦の入った力学的エネルギーなどは予想させても面白いと思うが。
前半部分は誤概念が多いから予想させる意味があるのに対し,このあたりは比較的知っていることが多く,誤概念が少ないのではないか。ただし,既習部分でも実験を見たことがないので,多く見せていこうということがメインになっているのでは。
Lab11,12はホームワークもごくわずかで,しかも実験とあまり関係のないことが多い。筆者も前半部分にかけた労力に対して手抜きしているのでは?
FMCE問題も作用・反作用まででこのあたりはない。力学全体をどうとらえているのだろうか。
モジュール1の力学でもそうなら,他のモジュールはどうなのだろう。モチベーションが下がっていることはないか。電気分野がどの程度新しい取り組みがあるのか,見ておくことも必要なのでは。
Physics Suitsの中でのREALTIME物理の位置づけも来週の研究会で確認しておく。

以上


●2007年11月18日 at 京教大物理実験室
第90回AP研報告
<参加者> 内村、山崎、谷口、倉内、古結、岩間

Lab9ニュートンの第三法則と運動量の保存
 まず2物体の衝突について 質量・速度とも同じ場合、質量が同じで一方が止まっている場合、質量が異なり一方が止まっている場合の3つについて相互に及ぼす力についての予測を立てさせ、その後に力センサーを取り付けた台車を2台衝突させることで、実際に及ぼしあう力を確認する実験が準備されている。 Lab9のファイルを一通り読んで、この実験に入ろうとし
たところで、京教大に力センサーが1台しかないことがわかり、実際の実験は午後から平安女学院場所を移動して行いました。
 しかし、最初、バージョンの古いデータスタジオ(USBのバージョンかもしれません)で実験すると、2つの力センサーが同期しないので、力のグラフがずれて表示されました。しばらく設定をいじったのですが、結局PCを変えて、実験を行いました。今回は、力センサーに力が加わったときをトリガーにしてグラフを描かせる方法が指示されていたので、力センサーに0.3Nより大きい力が加わったときに計測を開始するようにしました。(公開講座の扇風機のところで話題になりましたが、力センサーの最低の感度が0.3Nのレベルなので、トリガーのレベルをそれ以下にすると、ひとりでに始動してしまうので、この設定が必要でした。)
 計測方法がわかると、後はシンプルな内容なのでスムーズに計測はすみました。

 次に運動量保存に入るのですが、ここの展開これまでと異なります。これまでは実験のデータから、法則性を見つけ出すパターンでしたが、ここでは、ニュートンの第2法則から運動量保存則を式により導き出します。そしてその結果を実験で確かめる展開になっています。(「力積−運動量の理論は、第2法則から数学的に導出できるので、実際はニュートンの第2法則と等価です。」という記述がある)これまでの知識を元に予測してからそれを実験で確かめるパターンです。ここで改めて、既習者にとってのプログラムであることを認識させられました。実験は静止していた台車に非弾性衝突(台車が結合するようにする)を行い1台のモーションセンサーでその前後の速度を記録し、運動量保存を確かめるものです。衝突前後の運動量の値は2桁まで一致しました。
 2台のモーションセンサーを使わなければいけないような実験は時間があれば、測定方法も各自で考えて実施してみなさいとの指示があります。

Lab10 2次元の運動
 ここでは、1次元の一定の力による運動をx軸方向から、y軸方向への変換を行ったときの式やグラフで、位置−時間、速度−時間、加速度−時間の関係を確認します。 アクティビティ1ではそれを、ボーリングのボールをバトンのようなもので少しずつたたきながら、10mほど動かし、それをストップウォッチを使って記録し、エクセル、またはデータスタジオでデータを入力してグラフを描かせるもので、これは実験をしていません。ボーリング場から古いボールを分けてもらえるらしいので、準備ができたらやろうという話になりました。

 アクティビティ2では体育館などで、x方向にボーリングの玉を転がし、それと直角のy方向に少しずつたたきながらその位置を記録し、放物運動を確認するものです。
このあたりは、ビデオポイントを使った方がよいのではという指摘がされました。

Lab11 仕事と運動エネルギー
 実験書の内容の検討だけで、実験は次回にということになりました。

●2007年10月14日 at 同志社高校物理実験室
第89回AP研報告
<参加> 岩間,古結,北野,大西,本間,倉内,福嶋,酒谷,谷口,山崎

1.Lab7 受動的な力とニュートンの法則(酒谷・谷口)
  与えられた能動的な力に対して受動的にはたらく摩擦力や抗力,張力を考えていく。

 ・活動1−1 滑車を通しておもりをつり下げて,台車を加速する実験
  最初に,摩擦がない場合を確認して,それと比較して摩擦が台車にはたらく場合を考える。
  困難点:PASCAR(PASCO社製250g)で行ったが,摩擦パッドの取り付け位置がセンターラインからずれているため,1台の台車では糸で引っ張ったときに台車が傾いてしまう。やむなく,2台の台車を連結し,左右に摩擦パッドがあることで傾かないようにした。
  摩擦パッドをして等速運動をさせる実験だが,ちょうど等速運動になるように「職人芸」的に摩擦 
  パッドの食い込み方を微妙に調整させる必要がある。生徒がこれを行うのはちょっと大変。
  ポイント:この実験の場合,おもりが引く力を力センサーで測定し,等速運動であることからこの力が摩擦力に等しいことで摩擦力の大きさを考えさせるのだが,このことがすぐ理解できるかが比論になった。Lab4で,扇風機2台を逆向きに取り付けて,等速運動になることで合力がゼロになっていることを考えさせる実験があり,これを受ける形ではあるが。

 ・活動2−1 2−2 3−1 3−2 3−3
  2つの力センサーを用いて,第三法則を考えさせる実験。
  2人が綱引き,そのうち1人がスケートボードに乗って綱引き,1台の力センサーをスタンドに固定し,もう1台とゴムひも,糸,ワイヤーをはさんで綱引き,滑車を通して糸の方向を変えて綱引き
  どうやっても,必ず2台の力センサーのグラフは大きさが等しく,向きが逆になる。次に,滑車を通しておもりで台車を引き,台車にはたらく張力がおもりの重力よりも小さくなることを確認させる。
  (典型的な練習問題での,T=mg/(M+m)を実験的に確認させている)
  ここでも,「丹念にしつこく」繰り返すことが概念を形成させるのに重要か。

2.Lab8 一次元の衝突(山崎)
  運動量の変化が力積に等しいことを弾性衝突,非弾性衝突で確認させる実験 扱う例が変(!)。横断する子供達を救うために,バンに乗った者が子供達に向かってやってくるスポーツカーに正面から体当たりをする話。ただの自滅か,子供達が救えるかをバンの速度で考えるもの。もう一つは,妹の部屋で目を覚ますと家が火事になっていて,ドアから煙が侵入している話。部屋が散らかっていてドアに近づけず,できることはものをぶつけてドアに閉めることだけ。スーパーボ−ル(弾性)と粘土(非弾性)とどっちがよいかというもの。どちらもあまりの非現実さに唖然です。

 ・活動1−1 台車をいろんな速度で正面衝突させて合体させ,定性的に衝突を理解させる。

 ・活動1−2 力センサーを10pの高さから落とし,ゴムストッパー(弾性)と粘土(非弾性)で,衝突時にはたらく力の最大値をみるというもの。本体の質量を大きくしたり,高さを変えたりしても調べる。
  ゴムストッパーの方が力の最大値は大きいが,それぞれで衝突時間が違う。力の最大値だけでは比べられないと判断するのが目的か,まずは力の最大値で一定の判断をした後でその他の要因も考えられるとするのか,獲得目標がややわかりにくい。
  注意すること:力センサーのモードを1秒間4000ポイントまで上げる指示があるが,Datastudioでは最高が1000ポイント。それでも,もっとも衝突時間の短いゴムストッパーで,1/200秒程度なので,測定は可能。

 ・活動2−2 2−4 弾性衝突,非弾性衝突で,衝突前後の速度変化や力−時間グラフを求め,運動量変化が力積に等しいことを確認させる実験
  弾性衝突は,壁の代わりに固定したスーパーボ−ルにゴムストッパーのついた台車をぶつける。非弾性衝突は台車に釘を取り付け,壁の前に置いた粘土に釘を刺して止める形で行う。
  力積を求めるに当たっては,Datastudioで力ー時間グラフを表示し,「Σ」ボタンの「領域」機能でグラフの面積を求める。
  この実験では,弾性衝突,非弾性衝突どちらも見事に,運動量の変化が力積に一致して一同納得した。ただ,この内容を既習の生徒にはよくわかる実験だが,はじめて学習する生徒にはこの実験を理解するのはなかなか難しいという指摘もあった。


●2007年3月11日 at 平安女学院高校物理実験室
久しぶりに大勢集まり,にぎやかに充実したAP研ができて本当に良かったと思います。
今回,10.2節の終わりまでほとんど行けたので,第10章を基本的にやってしまうくらいの感じでいきたいと思います。

第76回AP研報告
<参加> 岩間,北野,小川,萬處,名古,内村,本間,高田,大崎,福嶋,谷口,笠,山崎

1.第10章の検討
<1>概要(笠),10.1ティーチングプラン(山崎)

・何故,モデリングを章として独立させたのか
 モデリングは物理における奥の深い、強力なテクニック
 導入としてのWorldMakerモデル
・キーワードは,Probability(蓋然性),指数関数的変化,調和振動子,微分方程式
 扱うのは,放射性崩壊,コンデンサーの充電と放電,単振動
・第10章の扱い方
 10.1,10.2をASの最後に持っていったり,10.3,10.4を第11,12章の後で扱うこともできる。

<2>10.1のActivity
(1)Activity10S,20S(山崎)
 WorldMakerを用いた森林火事モデル,石油浸透モデル,ウサギの個体数モデル
 ・WorldMaker 人工世界を作るという意味
         画面が一部見えない点では解消できていない(今回は使える)
 ・基本的ルール 「燃えている木」の隣の「木」は「燃えている木」になる他同様
 ・空間の一定比率に木をランダムに置く 比率が高ければ火事は全体に燃え広がる
   燃え広がる場合で最も少ない比率はいくらかを求める
   →やってみると,40%程度でほぼ8割燃え広がる。
 「ウサギの個体数モデル」の場合,初期分布だけでなく,死亡率と繁殖率を設定できる →ランダムな分布でも,燃え広がる,石油が浸透する,ウサギが繁殖するかどうかは一定の法則性が存在
(2)30P,40S(本間)
・30P(指数的崩壊の観察・放射能) 半減期の測定,カウンターをデータロガーと接続してグラフに,fitを利用してデータが指数関数的に減衰することを確認
 放射線源(プロトアクチニウム)は,第18章で紹介,検討した巧妙な線源でここでもベータ線の半減期を測定
・40S(崩壊のモデリング)
 スプレッドシートモデル,WorldMakerモデルで放射性崩壊を見る
(3)50E,60〜80S(小川)
 ・50E(サイコロを用いての放射性崩壊モデル)
  1000個のサイコロを転がし,6の目が出たものを除いていく。サイコロの数の減衰をグラフ化して確認。 →いくつかの学校で実験例あり
 ・60〜80S(放射性崩壊,泡崩壊モデル)
 崩壊率を設定し,グラフ機能で元の核が指数関数的に減衰するのを確認
 二段階に娘核が崩壊するモデルもある
(4)Q40S,R10T(萬處)
 ・Q40S(発展したモデルとサンプルの崩壊)
  短答,デジタルテレビを持っている家族の数,もっている家族数が多いほど,増え方は大きい。ファッションの拡がり方 いずれも指数関数的になる
  放射性崩壊 グラフ上の接線での崩壊率と平均崩壊率の考え方
・10T(トリノの聖骸布)
  放射性炭素による年代測定法によって,キリストの埋葬布と言われてきたものが,1325年付近のものと年代測定された。キリスト教国では表現の慎重さが注意にあり。

<3>10.2ティーチングプラン(谷口)
 ・コンデンサーの導入 電位差,電流,抵抗などの回路の復習
  充電,放電の指数関数的変化 
  微分方程式の解として求まる 
  ‘e’の理解,時定数RCの意味

<4>10.2のActivity
(1)100〜110E,120D(岩間)
 ・100〜110E,120D(コンデンサーの充電と放電)の実験
  電源装置,抵抗,コンデンサー,電流計(デジタルマルチメーター)で回路を作り,コンデンサーを充電,放電させる。コンデンサーの電気容量や抵抗の抵抗値を変え,電流値の減衰の仕方が変わることを確認する。時定数RCの確認
  クーロンメーターも利用 →結構精度はある
  120Dは,大きな可変抵抗を用い,可変抵抗を手動で操作して定電流になるようにして,同様の実験。
(2)Q50〜70S(北野),80〜90S(福嶋)
 ・Q50〜80S(コンデンサーの充電・放電),90S(放射性崩壊)の短答
  50はほとんど復習,60Sのグラフが充電にもかかわらず,指数関数的に減少する形になっていて明白な誤り。 70は,時定数の計算 イギリスでは授業中に電卓を持ち込まないとこの計算は無理。
80Sは,指数のグラフを分析,90は,崩壊定数と半減期の関係も確認する
(3)R20T(福嶋)
 ・R20T 読みもの(ついに果たした大西洋の征服のモデリング)
  大西洋を横断する海底電線では,内部の導線と海水間がコンデンサーになって信号が遅れるなどの問題が若きトムソン(ケルヴィン卿)によって理論的に取り組まれた。計算上導線の直径を6倍にすれば大丈夫との提案は拒否され,1858年の大西洋海底電線は数週間で役に立たなくなった。彼の意見を取り入れ,海底電線は1866年に開通した。

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