2005年の報告など


●2005年11月20日(日)13:00-18:00  at 京都教育大学物理実験室
<参加> 小川・山口・栗木・鍵山・北野・岩間・笠・内村・谷口・福嶋・山崎 中村理科より3人(鴇田,俵,他)

・電子黒板 デモ
 イギリスでほとんどの学校で用いられているもの
 エクセルやパワーポイント,あるいは他のソフトで作った授業書にコイルの入ったペンで書き込み,授業を展開。書き込んだものはファイルで取り込んで保存可。
 書き込んだものはOCRで文字可OK。(現在はアルファベットと数字のみ) キーボードで文字打ち込みも可能。グラフに線も引ける。
 価格約30万。立命館はSSHで,同志社はメディアセンターにある。
 研究会でも使えそう。

・p.a.スペアナのデモ
 現在のp.a.にソフトでアドインする形も可能
 FFTの取り込み方に何種類かあり(rectangular,hamming,hanningなど)
 マイクで音を拾い,波形を表示すると同時に周波数ごと強さを色で表示
 声のアイウエオの違い,人によって声の違うアの分析
 時間による変化をとらえることが意味をもつ
 スピーカーで音を出し,マイクで拾うものもあり,間に物質を入れて吸収の違いも分析できる(2つの音については開発中)
 まだ,販売はしていない。試してみたければ,中村理科まで。

 ◎マイクロソフトのメディアプレーヤーにこの機能がついたものがあることを立命館の生徒が発見,ダウンロードする形で追加できる機能。

第18章Activityの検討
Q10D,20X(山口)
 10D:危険を冒すコスト,
 20X:リスクについて人々に告げること
どちらも日常生活の中での交通事故,あるいは喫煙,スカイダイビングなどと比較して,バックグランドのラドンによる放射線によるリスク,原子力発電所の被爆によるリスクをデータとして比較している。
笠先生によると,G.マルクス氏の著書が種本。ラドンガスが国家平均の10倍ある家で換気扇をつけることで,どれだけのコストでどれだけのリスクを回避できるかの計算もあり。
百万分の1で死ぬ確率が14本のたばこ,ジェット機の1000マイルの行程とともに,原子力発電所の20マイル以内に150年生活するであったり,寿命の減少が1日10本のたばこで6年,農業で働くが320日,核のプラントで働くが51日と,原発に対してあまりの楽観論が目につく。

Q40C,50C(鍵山)
 40C:ラドン:健康によいか,それとも害になるか?
 50C:X線はどれくらい安全か?
ラドン療法(温泉),ラドンの飲用など人類の歴史で行われてきたことについての論説。
ラドン温泉の安全性の議論が結構行われた。話題:北白川ラドン温泉,なぜ北白川なのか,花崗岩に含まれる放射性物質を含むカツレン石,その中を通ってくるミネラルウォーター
微量放射線に閾値は存在するかの議論:Qの筆者は,炭坑夫のデータから微量の放射線でもラドンの肺ガンへの影響はあるとしている。閾値はあるという説が絶えずちまたでは流される傾向。アメリカの科学者の微量放射線の影響の研究あり(笠先生)
X線の安全性の議論も。吸収線量,以前と現在のX線の用い方等。

R10T(北野)
 R10T:ラジウムガール
夜光塗料に用いるラジウムを含んだ塗料を時計に塗るために筆をなめ,癌になった少女の裁判についての詩。
雇い主のUSラジウムが誤りのキャンペーンを行ったため,あまり知られていないという。

Activity30E,50E,60E(笠),70E,80E,90E(岩間)
 30E:周囲にある放射線,50E:放射線がイオンを作る,
 60E:アルファ粒子によって生み出されたイオン,
 70E:火花検出器でのアルファ粒子の射程,
 80E:霧箱でのアルファ粒子の射程,
 90E:アルミ、鉛の中でのベータ粒子の射程周囲に放射線をいろいろとはかってみよう
50E,60E,70Eでは,高電圧をかけた金属線の間にα線源をおき,電流が流れることで放射線がイオンを作ることを確認する。
岩間先生が,高電圧発生装置(うつるんですの回路を使用)で実験,α線源を近づけると火花を確認した。現在高電圧電源が故障で当日はできず。(ML参照)

Activity100E,110E,120E(山崎)
 100E: 生体物質内での吸収,
 110E:ガンマ線の射程,
 120E:プロトアクチニウムの半減期の測定
まず,110Eの実験は,γ線源を利用して,鉛や他の物質でどの程度γ線を吸収するか,鉛の厚みによってどの程度変化するかを測定,次に,距離によってγ 線の強さが逆二乗の法則になるかを確認する。放射線計測協会から借用した「はかるくん」と「実習セット(γ線源付き)」を利用して実験,結果については岩間MLに添付。
γ線源が結構強いのに驚き。鉛以外は1pの鉄板でもあまり吸収されず。山口先生によると,他の線源の影響を受けてしまうので実習は一つの理科実験室で4セットがせいぜいとのこと。
100Eでは,ラフランス(洋なし)でβ線の吸収実験。5pから始めたが,5o程度でもβ線は十分吸収する。
120Eは,プロトアクチニウムのγ線源を探している最中。


●2005年7月23日(金)18:30-20:00 at 京都女子高校物理実験室

学生の福嶋君があらかじめ実験してきたものから始まる。針金を曲げるテストで,元の針金・焼き入れしたもの・焼きなまししたもの・焼き戻ししたもの の4つを比較。


さらにいろいろな金属線をふいごつきバーナーで高温にさらす実験に取り組む。


金属を引っ張ったり伸ばしたりするとき,金属原子の原子配列や構造はどのような変化があるのかを示すモデル実験。
ガス管にゴムホース(黒)を取りつけ,穴あき針を装着。洗剤を含む水に針を入れるとガスの泡がたくさん生じる。泡の大きさが均一になるように注意しながら,たくさん作り,ガラス板で泡を押したりすると,一部の泡が割れたり押されたりして,転位の様子が分かるというもの。参加者一同盛り上がる。



●2005年5月29日(日)10:00-18:00 at 京都教育大学物理実験室 第53回AP研究会
<参加> 鍵山,栗木,小川,萬處,北野,岩間,笠,高田,金崎,谷口,村田,福嶋,山崎

<実験>液体の吸収 [添付で,excelデータ,写真あり]
アクリル板で水槽を作り,対角線に1枚アクリル板を入れることでくさび状の2つの水槽にする。一方に5%硫酸銅水溶液,一方に水を入れる。すると,位置によって硫酸銅溶液の厚みが線形に変化し,光の吸収がどのように変化するかを実験で求めることができる。
水槽製作 福嶋
光の吸収測定については,発光ダイオード(昨年公開講座で鴇田さん製作のもの),受光部としてフォトダイオードを使用,電位分割器で電圧を取り出し,デジタルマルチメーターで測定。結果は,厚みにつれて指数関数的に光量が減少していくのを確認した。

4章,5章のActivity
4.2節
160S 自転車のフレームデザイン (谷口・笠)
javaアプレットを用いたものが,CD-ROMの中にあり,自転車のフレームを作るための素材の強度やコスト,重さなどのデータがある。theBike.html 開いて確認したが,一部しか動かなかった。
4.3節
Q60,75,55 Activity260E,R90T (内村)
Q60 屈折と反射 日本でも良くある問題。球体に入射した光束が球体の裏側で1点に集まり,元に戻っていくような反射の扱いは珍しい。
Q75 透明人間 透明人間は目が見えるかという質問
Q55 めがねレンズの材料 様々なガラス,ポリマーの屈折率,密度が与えられて考察,特にn/ρを目安にグラフで検討
260E 透明パイプを通して情報を受け取る 光ファイバーの自作とその評価もあるが,実際には製作はなかなか難しい
R90T 絶縁体や金属における吸収と散乱 金属が透明でない解説,ルビー,サファイアなどの色の理由,光ファイバーの吸収特性など
4.4節
DisplayM 100,110 Activity 350E (北野)
DisplayM 100 伝導度の値の範囲 テキストの伝導度の図表 10の24乗の範囲での変化
 110 伝導率と抵抗率 金属の長さ,断面積と抵抗率,伝導度の説明
 350E 電気抵抗率を測定する コンスタンタン線の直径などもマイクロメーターで測定して,R=ρl/Aの確認

第5章
5.1節 ティーチングプラン (山崎)
物質を裸眼,虫眼鏡,光学顕微鏡で調べ,STMやAFMについても理解する。
いろんなレベルでの構造とその特徴をとらえる。木,ポリマー,織物,骨など。
限られた2時間でどれだけ実験観察や検討ができるかが問題。
・イギリスの高校の例
 20S 繊維 イメージで 30E 木 虫眼鏡で 80E 油膜の実験−分子測定
 宿題 Q10C,30D R40T,及びPhysics Worldの論文(ティーチングプランにあり)
Q30D 原子のサイズ (岩間)SiOのAFMの写真を見て,原子間隔を求める


本日は研究会終了後に,村田先生退職記念パーティを行いました。






●2005年4月17日(日)12:00-18:00 at 京都教育大学物理実験室 第50回AP研究会
 <参加> 萬處,北野,岩間,鍵山,高田,山口(附属),福嶋,金崎,笠,谷口,山崎

1.4,5章「マテリアル」
Q10S 物質の範囲の探求(谷口)
 生活の中で使われている物資について考える
 アルミ アルミホイル以外で使われているものを大学生に尋ねると,一円玉以外の解答がほとんどない 軽さがポイント フレームなど
  アルミを硬くする研究,現在でも注目されている
  タービン 大学生はほとんど知らず
  ゴム 天然ゴムと合成ゴムの用途
  このあたりは,高校生にインターネットで調べ,発表させるのが面白い
90H〜130H (鍵山) 
90H りんごの等方性
 実際にりんごを切り,中心からの放射状とその垂直方向での違いを確認。理由は,細胞が放射状に細長く,並んでいるため実際に細胞がどのようなものかは後日調べることを













100H 日常の材料の変形(クリープ)
 
 はんだをばね状にして,おもりを吊し,時間経過と長さを測定
 しだいに一定値に近づくグラフは指数のように(岩間先生ファイル作成)
 笠先生,クリープ速度からざっと計算して,ずれの活性化エネルギーは0.1eV程度。
 ドライヤーで熱して実験を行うと,おもりを吊す前から自重でどんどん伸びていき,同じおもりでも変形の速度はぜんぜん違う(上写真右)。
110H 日常の材料の時間効果
 シリプティ−イギリスのおもちゃ(谷口先生購入)で実験
 直径1p程度の円柱状にして非常にゆっくり引き延ばすと1m近くまで切れず,やがて細くなったneckの部分で切れる
 急に引きちぎると,断面が脆性破壊の特徴である鱗状になるとあるが,そこまでは確認できず
120H カスタードの時間効果 と130H 硬いゼリー は実験できず
 130Hで,ゼリーに羊毛や髪の毛を混ぜて固め,その柔軟性,ひび割れ抵抗の違いは次回見る方向で
 
Activity10E〜40E (谷口)
 50E〜80E (北野)
 マテリアルの基本的な材料試験 このあたりは谷口先生が大学の授業で実践,装置もあり,実際に行った。
10Eは,引っ張り試験。ワイヤーの片側をクランプで止め,滑車を通しておもりをつり下げる。切れるまでの重さをみる。切れた瞬間の危険性を考え,安全めがね着用。おもりのつり下げ部分にノウハウあり。
 銅(φ0.28o) 1,200g ステンレス(φ0.1o)1,400g 真鍮(φ0.28o) 2,900g ユニクロ(φ0.28o)2,600g チタン(φ0.25o) 4,000g  ミシン糸(ポリエステル)2,200g
 チタンがずいぶん強いのがわかる 切れる直前にワイヤーが急激に伸び始める
 糸の方が途中に変形が大きい
20Eは,圧縮試験 簡単に書いてあるので,実際にはどのように行うのか,わかりにくい。どうやら円柱状で行うのではなく,円筒形にして行う(それでないと壊れない)。円筒の作り方で強度が変化しそう。
30Eは,硬さ試験。金属板にポンチを当て,上から球を落としてポンチを上からたたき,開いた穴を調べる。チタンに比べ,銅の開いた直径は2.5倍程度。
 今回はウェブカメラで見てみたが,次回からは顕微鏡とCCDカメラを購入し,レンズに目盛りをつけて,穴の直径を測定する。



40Eは,引き裂き試験 谷口先生の自作装置は固定するために空けた穴で左右されやすく,今回は割り箸に巻き付けて実験。ケーキ用シートで行ってみたが,2,000gで引き裂かれた。装置の固定の仕方に工夫の要あり。(右写真)
50E 立方体の密度を測定し,密度と強度の関係を考える
 アルミ,鉛,銅など用意したが,チタンもそろえる
60E 熱伝導試験 プチプチシートの上で,金属の棒を用意し,一方をヒーターで熱し,ヒーターから3p,5pの部分での温度変化を調べる。ヒーター,APのCD-ROMで,自作する器具として紹介されているが,どのようにすればよいか,要検討。
70E 電気伝導試験 マルチメーターで電流を計り,伝導度を求める
80E 光学的特性 結晶を粉にして,透明度の違いを見る








●2005年3月13日(日) 13:00-18:00 at 京都教育大学附属高等学校 物理実験室 第49回AP研究会

<参加>小川,萬處,栗木,鍵山,高田,岩間,金崎,谷口,笠,山崎,土屋
この時期の京都ではとても珍しいくらい激しい雪が降っています。
 
1.モデラス日本語化 (笠)
 (1)ヘルプファイルの日本語化
 (2)モデラスの日本語化

2.第14章
 Questions (遠山−欠席)
 130D 流れやすい液体
 水,エタノール,溶けたガラスのエクセルデータを利用し,lnφ(流動性=1/粘性)と(1/T)のグラフが直線になること,その傾きがε/kになることから,水の分子が隣の分子から離れ去るのに必要なエネルギーεを求める。
 水の場合,直線の傾きが低温で大きくなる理由,溶けたガラスの場合は,直線からずれるデータがあることなどの議論がある。
 140C 汚れた表面
 活性炭などの表面で分子を吸着することの議論,吸着し続けるのではなく,吸着した分子が離れるようになるときのエネルギーを計算し,100K,300Kでの比較から高温では吸着した分子が離れていくことを議論
 ε/kTが30程度の場合を議論してきたのに対し,窒素分子が引き合って液体になる場合は,ε/kT=1での議論あり。各自また検討を。
 150S 熱い金属からの電子
 熱イオン放出の温度での違いを議論
 発展的な課題として,kTB=εとなる温度TBを求め,このkTBが仕事関数になることを確認する。このTBを意味するものも要検討。
 
3.この章と高校「化学U」,大学の「物理化学」との関連(山崎)
 高校 化学Tは概論のみ,化学Uで,物質の三態や化学反応論がある。
 分子の運動エネルギーのマクスウェル分布の図があり,あるエネルギー(蒸発では蒸発熱,化学反応では活性化エネルギー)以上の分子が蒸発していく,あるいは反応していく説明がある。実際にはε/kTが30程度であるから,ごくごく一部の分子であるが,お話的なので量的な判断は出てこない。
 現象的,経験的な面が強く,物理と化学を結びつけて統一的にとらえるようなことが大学での物理化学でも少ない。
 私学の理科一科目入試,化学専攻の学生で物理に苦手意識。「物理化学」は難しいと避ける傾向あるのでは(山崎 註)

4.第4,5章「マテリアル」
 第4章 Overview 及び Teaching Plan (谷口)
 大学での実践も含め,谷口先生が全般的に解説。物質の力学的,光学的,電気的性質を各節で実験的,データ分析的に取り上げ,それがどのように用いられているか,その理由も検討していく。
 4.1節 物質の特性と用途,硬度と剛性の違い,脆性と靱性などの概念を実験しながらとらえる
 4.2節 この発展として,応力,ひずみ,ヤング率などの量的な把握
 4.3節 光学特性の実験 日本でも行われているものが多い
 4.4節 電気特性 導電性などの実験
 特に,4.1節は大学実験で実践し,生徒が興味を持ったことなどを報告
 次回は,京教大で実験しながら第4章を展開
 4.1節を中心に訳及び実験装置は一定そろっているので,実験しながら第4章全般を取り組む分担は後日

5.夏の計画
6.シンガポール授業訪問
7.学会報告
8.科研費関係


●2005年2月12日(土)の朝日新聞夕刊和歌山版に,和歌山での公開講座が記事(↓)となりました。

また和歌山で実施の公開講座がasahi.com MY TOWN和歌山で記事となっています!


●2005年2月6日(日) 10:00-17:30 at 京都教育大学物理実験室  第48回AP研報告

1.Activity 270E「蒸気圧の測定実験」 (鍵山)
水を100℃に沸騰させ,フラスコ内の空気を追い出してからコックを閉め,加熱をやめると温度低下。
5℃温度が下がるたびに少し加熱し,沸騰したときの温度と水蒸気の圧力をイージーセンスを利用して測定。95〜60℃
縦軸をlnP,横軸を(1/T)としてグラフ
この傾きが,ε/kになることから,液体から水分子が蒸発するのに必要な1分子あたりのエネルギーεを求めると,6.8×10^20J
14章Questions50Sで紹介されている値が,6.6×10^20Jであることから,実によく一致していることがわかった。
このような実験は簡単にできるものの,ボルツマン因子を考える上で意味のある実験と考えられる。高校物理でも化学でもなかなか扱われない領域。大学初等の実験として試みる価値もあるとの意見あり

2.Quesitons60〜90(14章) (内村)
ボルツマン因子について,定性的,定量的に考えさせる問題。特に,化学で温度が10℃上昇すると,反応速度が2倍になることの意味について考えさせている。

3.プラズマにおける電子温度の測定実験 (谷口)
谷口先生の専門分野であるプラズマ実験の演示。
1Pa程度の真空中でアルゴンガスや窒素ガスを入れ,熱イオン放出から電子を2段階で加速し,プラズマを作る。プローブを入れ,電圧をかけたとき,流れる電流の値を測定する。ln(I)=(eV/kT)+Cから,I,Vの傾きを求めることで,ボルツマン因子を用いて電子の温度を求めることができる。
 <すいません。資料をおいてきてしまいました。この部分は記憶で書いています。初めて谷口先生の行っているプラズマの実験を見せて頂き,詳しい説明もしていただいて,行っていることがよくわかりました。窒素ガスだとオーロラと同じ赤い色になっていることに感銘を覚えました>
 
 

4.立命館センサープロジェクト 生徒発表の報告 (谷口・鍵山)
探求学習として,暗くなると光るセンサー作り,サーミスタを用いた温度計作りの発表。疑問点を解明して新しい発見に持っていく生徒の努力と探求心に感心。パワーポイントのうまさに驚きでした。


●2005年1月10日(月祝) 10:00-17:20 at 京都女子中学高校物理実験室
あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

午前中はメンバーの勤務校で実践したセンサープロジェクトの生徒レポートの紹介をした後,前回の懸案であった「時計反応」の実験からスタート。


ヒートバスや温度計,ストップウォッチも用意して,0.05mol/リットルのKIO3水溶液およびデンプン入りNaHSO3水溶液を5mlづつ一定の温度のもとで混合し,反応速度を見る実験。温度によって色が変わるまでの時間が異なり,温度と反応速度の関係が指数関数的であることから,活性化エネルギーを求めようというもの(Activity260E)。
時計反応を支配する関係は,
  反応速度 ∝ exp(-ε/kT)
εは分子当たりの活性化エネルギーで,Tは温度[K],tは反応にかかる時間であり,反応速度は1/tとする。つまり
  1/t ∝ exp(-ε/kT)
  ln(1/t) = -ε/kT
縦軸をln(1/t),横軸を1/Tとしてグラフを作成する。グラフの傾きは-ε/kの値を持つ。傾きにボルツマン定数 k=1.4×10-23J/K をかけると,εが求められる。
下はエクセルで解析中の様子。確かにグラフの傾きは一定になっているようです。

実験では50℃,40℃,30℃,20℃,10℃,1℃の5種類を行い,まずまずの結果を得ました。
30℃のときの実験風景を動画にしました。左の小さい写真をクリックして下さい。(約5.9MB)

ゴムはのびる限界があり,Readings50Tでの「輪ゴムを5倍に伸ばせば・・・硫黄ブリッジ間のイソプレンの結合は約25個ということになる。」というくだりを試す実験。
約5倍のところでゴムが切れてしまった!


笠先生による「高校教員のための統計力学・熱力学」の話。勉強熱心な笠先生はノートも作って下さり,ニコニコしながらの難しい話でした。
でも確かに気体分子運動論から抜け出ない現在の日本の高校物理ですが,見通しのある明るい議論だったのではないでしょうか。





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